アロサウルス似の化石、オークションで落札
恐竜化石は日々世界各地で発見されており、歴史的な発見も数多いが、実はあまり知られていない問題も多く起こっているのである。
今回はそんな世間で起こった、化石での問題について取り上げていく。
最高額での化石落札
その問題というのが、「新種恐竜化石のオークションでの競売」である。
2018年の中頃に、パリの象徴たる「エッフェル塔」で新種の極めて珍しい肉食恐竜の全身骨格がオーディションで競売にかけられたというのだ。
この化石は2013年~2015年にかけてアメリカのワイオミング州で発見され、全長9m、高さ2.6mにも及ぶ、大型の肉食恐竜のものだった。
全身の7割もがほぼ無傷の状態で売りに出されてしまい、200万ユーロ、アメリカドルで230万ドル(日本円で2億6000万円)もの破格の値段で落札されたという。
落札したのはフランス人の美術品収集家で、本名は明かしておらず骨格は落札した後、博物館に貸し出す予定だという。この化石の出品者も名前は明かされていない。
ちなみに競売には電話入電でスウェーデンと日本からも落札に参加者が出たという。売り上げの一部は、野生動物保護などの団体に寄付されるという。
破格の値段の肉食恐竜はアロサウルス似?
この恐竜は分類が不明の全く新しい、新種の肉食恐竜であり、これまでに同種の骨格が見つかったことはないという。
研究者らの間でも具体的な種が断定できず、競売前に骨格を検証した二人の学者によると、1億5000万年前のジュラ紀後期に生息していた「アロサウルス」が最も近い種と推定されている。
だが、見た目が似ているだけで骨盤や頭骨、歯などに構造的な違いがみられると言い、完全な新種の恐竜であるとここでもコメントが残されている。
骨格を見てもかなり大型で首はかなり長く、腕は大きく巨大な鉤爪も見られ、強い捕食性を持つハンターだったことは間違いないとみられる。
名前も正式な名前が決められていない無名の恐竜であり、落札者が自分が種の命名者だと主張したが、命名は国際命名法によって行われるので、学会が注意を促したという。
違法性と皮肉な事態
化石は映画「ジュラシック・パーク」により需要が高まり、セレブの間で人気が急騰して、発掘現場や博物館から盗まれたりと、違法な手段で化石がマーケットに出回ることも増えたという。
だが学者たちにとっては、個人の手に渡ることで新たな情報や理解、解釈、発見がなされなくなると現状に対して不満の見解を示している。
前述のオークションも、アメリカの学会が中止を求め「公的な管理の下に置く」ことを求めた公開書簡も送付したが、結局競売は強行され、結果化石は膨大な額で個人の手に渡ってしまったという。
有名人も関わったことがあり、ハリウッドスターの「ニコラス・ケイジ」氏もコレクターとして熱心で、彼は2007年にオークションでティラノ類の頭骨を当時日本円で3200万円で落札した。
だがこれはモンゴルの発掘現場から違法に持ち出されたもので、古生物学者が横流ししたものと後に判明し学者は有罪になったという。その後、返還要請に従いニコラス氏は化石をモンゴルに返したという。
美術品的な価値を見出し、高値で買い漁る行為は研究を大きく停滞させてしまい、膨大な情報を失ってしまうに等しく、収集家は希少性と経済的価値に着目するといい、学者はやはり批判的に見ており、ほとんどの化石は恐竜に限らず決してありふれたものではないという。
批判的な面も多く取り上げられるが、見方を変えると世界にはまだまだ表に出ていない、個人が所有する膨大な「新種恐竜」の化石があるとも考えられ、それらがまた新たな恐竜の存在を浮き彫りにして歴史的な発見をもたらすかもしれないとも言える。
有名人が持っている化石が新種の貴重なものだったとすれば、より研究、発掘が進み新たな発見の報告がもたらされるかもしれないということだ。
皮肉極まりないが、需要の高まりが恐竜の歴史を解き明かすカギにもなりかねないのは、人の「知りたい」という欲に他ならないのかもしれない。