ハゲワシ。史上最大の飛翔性鳥類、
古代生物にはその存在こそ知られているが、全容が把握しきれていない生物も数多い。恐竜も例にもれず、実際の姿が新たな発見により二転三転することも珍しくない。今回は結構名が知られているが、全容は把握しきれていない「鳥類」を書いていく。
史上最大の鳥
今回の主人公の名は「アルゲンタヴィス」、名前の意味は「アルゼンチンの鳥」。飛行能力を持つ鳥類で「史上最大の鳥類」と称される、巨大鳥類の一種である。
名前の通り、アルゼンチンでわずかな化石が発見され、その存在が知られるようになった。発表されたのは2014年と、かなり最近の話である。新生代第三紀中新世後期、約900万~680万年前のアルゼンチンに生息していたとされ、発見された上腕骨から推測して、翼開長は7~8m、下方修正されて5~6mはあったとされている。
体重は100㎏はあったとされているが、見直した結果80㎏、だがより正確な手法による計算によると典型的な体重は70㎏だったとされている。
化石が少ないが、微かに猛禽類と判別できる要素が見受けられ、このことからアルゲンタヴィスも現代のワシやタカに近い姿をしていたのではないかと推測されている。
復元図では猛禽類としての王道的なフォルムもそうだが、ハゲタカの様なコンドル類をそのまま大きくしたような姿で復元図が掛かれるのが主流である。だが化石がどうしても少ないので、全容はいまだ掴めていないのが現状である。
不明な飛行能力
「史上最大の鳥類」と称されているが、実際はわずかな化石しか見つかっていないので、その全容、生態ははっきり言って不明である。
飛行能力がどの程度のものだったのかも未知数だが、現生鳥類との比較が少なくとも可能であり、彼らの生活や生態もある程度推測がなされている。
その巨体のため飛行能力にも、いくつか疑問が付きまとっている。体重が70キロもあると、生物学的に飛び上がるのは不可能とされており、ハトの様な平地から一気に飛び立つための強力な胸の筋肉もなかったとされる。
彼らは翼の大きさと構造からして、羽ばたき飛行で舞い上がって飛行したと推測されているが、熱による上昇気流を利用した可能性もある。
だが単純に翼が大きすぎ、ある程度高度がある場所、傾斜からしか飛行できなかったとされる。一応当時の生息環境は温暖かつ乾燥しており、上昇気流の恩恵にあずかれた可能性が高い。強力な足によって楽に歩行はできたが、飛び立つまでに捕食者のいい的になった可能性もある。
だが、天敵の有無も不明だがアルゲンタヴィスの死亡率はかなり低く、捕食されることもほぼなかったという。
死亡要因は老衰、自己、病気によるものとされている。
腐肉を漁る王者
「巨大なハゲワシ」というイメージが持たれているが、推測するとそのような生態だった可能性が高いという。
アルゲンタヴィスは500平方キロメートルの広大な縄張りを持ち、死体を食料としていたスカベンジャーだったとされる。
翼の構造が説教的な捕食に向いておらず、肉食獣が残した食べ残しや死体を漁っていたと思われる。
だが嘴は鋭さがあり、巨体も相まって場合によっては陸の捕食獣から獲物を奪い取った可能性も十分に考えられる。
現代のハゲワシも小動物なら狩ることが可能で、アルゲンタヴィスも当時は小型獣が中心だった時代では、強力な捕食者として君臨できたかもしれず、頭骨の形状を見ると小型動物なら嘴でくわえ込むようにして殺し、そのまま丸のみにできたらしい。
これだけ巨大な鳥類は現代では存続ができない。それはつまり過去の時代は過酷であれど、繁栄できる生物は本当に恵まれていたということである。