カルカロドントサウルス類!ティラノを超える大型肉食竜
近年ではティラノサウルスを超える巨大な肉食恐竜の存在が取りざたされ、ティラノの立場も若干危うくなってきてるようにも思える。その筆頭として映画で一躍名を挙げたスピノサウルスがあげられるが、じつはこのスピノサウルスにも手傷を負わせることができた、ティラノ以上の体格を持った史上最大級の肉食竜が存在したのである。
鋭くナイフのような牙を持つ恐竜
その恐竜の名は「カルカロドントサウルス」、名前の意味は「サメの歯を持つトカゲ」である。
その名の通りサメのようなナイフのように薄く、切れ味鋭い牙を持っていた。カルカロドントサウルス類はジュラ紀に活躍したアロサウルスに近縁であり、彼らと同じく前足は強靭で鋭いかぎづめが付いていた。全体的に見て大型の種が多くギガノトサウルスもこの分類に含まれている。体長13メートルとティラノより少し大きいぐらいで、体重は幾分ティラノより軽かった。
スピノサウルスよりは数メートルほど小さいものの当時生息していたとされる、エジプトやモロッコ、スーダンやアルジェリアなど北アフリカ一帯に生息しその付近では最強クラスの肉食恐竜であった。生息域にはスピノサウルスも生息していたが、彼らが川や運河などの水場を住みかとしていたのに対し、カルカロドントサウルスは平野付近に生息し、生息域には数10キロもの距離がありお互いに獲物も違っていたため、積極的な競合は起こらなかった。
しかし当時から乾季はあり、その時期には川や水辺は干上がり、必然的にスピノたちの獲物は少なくなる。そうなると彼らは内陸付近まで繰り出し、獲物を捕らえていたとされる。その結果獲物の奪い合いが発生する割合も多くなり、この2種は争ったとされる。実際スピノの化石には背中の帆の骨が噛み折られている痕跡が存在したものもあったが、これをやったのがカルカロドントサウルスといわれる。身体能力にそこまでの差はないのでどちらが勝つかはその時次第だっただろう。
化石の発見
化石は1920年代にアルジェリアで見つかったが、なぜか深く考えずにメガロサウルス類の仲間と思われたが、その後エジプトで断片的な化石がスピノと共に見つかり、明確な新種とされたがスピノサウルスと同じく戦争のせいで博物館が空襲により焼かれ消失してしまった。
その後1996年におおむね完全な頭骨が発見され、新模式標本に認定された。しかし全身骨格は復元されておらず、近縁種から推測してかろうじて体長の復元に至っている。
名の由来のその牙は非常に特徴的で、断面は薄く歯の幅は広く、前後方向のカーブが少なく鋸歯は特に大きかった、前述の通りナイフのごとく鋭さに秀でた構造をしていた。
この歯の形はティラノサウルスの歯が太く骨をかみ砕けるぐらい破壊力があるものに比べ、切れ味に秀で、獲物に裂傷を負わせやすい構造であり、死肉を漁ることもあるとされたティラノ以上に捕食者の傾向が強かったとされる。
頭骨の形状も分厚く頑強なティラノに比べ、比較的薄く軽量な作りであり、歯の構造も相まって獲物に力任せに噛みつける構造ではなかった。ティラノがパワー型に対し、彼らは獲物に奇襲をかけノドや首など比較的もろい部位に噛みつき血管を切断し、大量出血による失血死を狙ったとされる。
同時代には自分より巨大な竜脚類の一種パラリティタンという草食恐竜の化石に本種の歯が混じっていたり、生息していた地域とも合致し、これらの獲物にも後に地球に現れるサーベルタイガーの狩りのように大型の獲物に噛みつき深手を負わせ失血死させていたとされる。
同時期には魚食性のスピノサウルス、スマートな体格で身軽なデルタドロメウス、腐肉食性のルゴプスが生息していたが、食性の違いからうまく共存していたとされる。
そんな彼らも白亜紀後期に差し掛かるころには台頭してきたティラノ類によって生存競争に負けてしまい覇権を奪われたとされている。
これほど大きな恐竜であってもその後の覇権争いにおいて勝てるとも限らない、過酷な恐竜時代の一角を担った、肉食竜であった。