中生代最古の1億年前のハチ
中生代の恐竜の新種並みの貴重な「ハチ」が発見されたという報告が入った。正確にはハチの「巣」が化石になったものなのだが。昆虫の化石は中生代からもたびたび発見されているが、今回は貴重さの一点において頭一つ抜けた発見になった。
最古のハチを発見
今回の主役の名は「ケルリカリクヌス」。正式名は「ケルリカリクヌス・クラウセイ」。
約1億年前の白亜紀前期ごろの南米のアルゼンチンに生息していたという、新種の古代のハチである。正確にはそのハチが住んでいたという、巣穴の化石が見つかったのである。
ケルカリクヌスは、ミツバチの様に花を訪れ密や花粉を集める「ハナバチ類」の一種と認定され、その種のグループとしては「最古」の証拠と認定された。
花粉の媒介者としてハナバチは最も重要な昆虫の一種で、この巣穴の発見はハナバチの進化に重要な一説を加え、白亜紀の初期に花を咲かせる「顕花植物」の一部が、共に多様化し進化したと裏付けたという。ハチの多様化と進化において、今回の化石の発見は発見者曰く「驚異的で、宝くじを当てたようなもの」とまで言い切った。
奇跡的な巣穴
発見された巣穴は約1憶~1憶500万年前の岩石の中にあり、降り積もった直後の火山灰の中に作られていた。ブドウの房のような形で、幼虫が成熟するための小部屋や部屋同士をつなぐトンネルから形成されていた。現代の昆虫でこうした巣穴を作るのは、「コハナバチ科」のハチだけという。
世界中に多様な種類が存在するが、一部の種は今回の巣穴の化石と酷似した巣を実際に作るという。
こういった生物の生活様相をしめす化石を「生痕化石」といい、その生物の行動を詳細に教えてくれるといい、骨格以上に重要な発見に成り得るものもある。
植物と共に進化
発見者たちは現代のハナバチ64種のDNAと、巣の化石などの情報を複数照らし合わせ、系統樹を書き直した。それによると現代のハナバチ類は、1億1400万年前から猛スピードで多様化したことを示したという。
実はこの期間は「真正双子葉類」という、顕花植物の8割近くを占める植物が多様化しだした時期と一致しているらしく、このことから花粉の重要な媒介者たる「ハチ」と顕花植物がかなり初期から、お互いの変化に合わせて進化していく「共進化」を補強し、過去のいくつかの研究での仮説を裏付けているという。
ちなみにこの巣穴の化石の時代よりも、すでに1億年前にコハナバチが進化していたことが分かった。昆虫はこの地球上でもっとも繁栄している動物と言われているが、実際に昆虫は恐竜以上の古い歴史を生きている。
生物の大半が海に住んでいた時代から支配者として君臨しており、目立たないながらも、ある意味人間以上に繁栄しているといってもいいのではないだろうか。