馬とゴリラ?奇妙な古生物、カリコテリウム
恐竜は巨大なトカゲという印象が昔は一般的で、現代の相次いで発見される新種の様な奇抜さ、コミカルさは考えられていなかった。
しかし現代の哺乳類にも恐竜には劣らない姿の種類は多く、それは恐竜が滅んだあとの古生物にも多くみられることだった。
今回はかなり奇妙な姿の古生物を書き留めていく。
奇妙な奇蹄目
その生物の名は「カリコテリウム」。名前の意味は「小石の獣」。
約2500万年~500万年前の、新生代中新世から鮮新世にかけて、ユーラシア大陸を主な生息地にして繁栄した哺乳類の一種である。
タイプ種は1833年に記載されたので、かなり古い時代に発見された、かなりマイナーな古生物といえる。
1934年にも化石がインドで発見されており、ユーラシア大陸に広く分布していたと考えられる。
体長は2m、体高1.8m程、体重は1tと体型は幾分小柄だったが、「奇蹄目」という、ウマ類やサイ類が所属するグループに属し、カリコテリウムも馬に近縁な動物で、彼らはそのフォルムが非常に特徴ある動物だった。
風変りという点では、なかなかのものだったようだ。
馬とゴリラが合わさったかの様
カリコテリウムは馬に似た頭部を持ち、体格は腕が長く後ろ足の短い、まるでゴリラを思わせる体格で、まるで馬とゴリラを足して割ったような姿だったのである。
どこか古代のナマケモノ「メガテリウム」にも似ていたが、姿だけで実際は全くの別種である。
前足が非常に長く、後ろ足は極端に短いため、背中は後方に向かって強く傾斜する非常に独特な姿勢をしていた。
だがその特異な体稀有故、素早い動きには不向きと言えた。
手には馬の様な蹄ではなく、鋭く大きな鉤爪を持っており、この爪を内側に丸めてこぶしを握るようにして歩く、ナックルウォーキングをしていたとされる。それこそゴリラの様に。
この爪は食事の際に樹木の枝を引き寄せ、木の葉を食べるために使っていたとされる。
だが体型が俊敏な動きには不向きだったので、外敵に襲われた際には、爪を武器に戦ったとも考えられ、武器としての用途もあったとされる。
奇抜な見た目だが、食性は柔らかい木の葉が主食の草食性動物で、当時大陸に生い茂っていた密林の樹木の木の葉を主食としていたようである。
木の葉でも柔らかい新芽を好んでいたようで、発見された歯にはほとんど摩耗がなかったという。
日本でも発見例がある
カリコテリウムも例外なく絶滅の憂き目にあい、現代の直接的な繫がりのある動物は生きていない。
彼らは森林地帯に生息していたが、やがて地球は寒冷化、乾燥化していき温暖で暮らしやすかった森林はやがて減少、代わりに草原が増えていき、生息地を失くしたのが原因とされる。
体型や食性を見ても、森林で暮らしやすいような特殊化をしすぎてしまい、絶滅に追いやられたと考えられている。
実はカリコテリウムの近縁種は日本でも発見されており、最初の化石は1917年以前の岐阜県で発見された。
1800万年前の地層から見つかり、当初はサイの化石と思われていたが、再調査の結果カリコテリウムのものと判明した。
約78万年前に絶滅したものとされている。