カスモサウルス、巨大なフリルで外敵をけん制
恐竜界の中でティラノサウルスが繁栄を極めた白亜紀後期、一口に前期、後期といえどその時間の差は数千万年もの誤差があり、その時間の中で恐竜たちは例外なく絶滅と進化を繰り返し続けた。
白亜紀後期
ティラノのライバルたるトリケラトプスが代表の角竜たちは有名な種はすべて白亜紀に出現したものであり、それ以前の時代に角竜は少ないか、ほぼ見られなかった。
白亜紀になり進化が急激に加速したということであるがこれらはいまだに詳細が判明していない。実際角竜というのは実にバリエーションに富んだ姿かたちの種が多いのが特徴であり、角竜なのに角がなかった種までがいるほどである。
こんかいはその角竜でも特に巨大なフリルを身に着けた、結構有名な角竜を紹介する。
フリル特化の竜
今回取り上げる恐竜は「カスモサウルス」。名前の意味は「穴の開いたトカゲ」。白亜紀後期の北米大陸に生息していた、トリケラトプスに代表される、角竜の一角である。
体長5m、体重2tとトリケラトプスよりかは幾分小柄で、華奢な中型角竜であった。
巨大な穴の開いたフリル
彼らは「穴の開いたトカゲ」という意味の名がつけられたが、これは彼らの頭部の巨大な襟飾り(フリル)に大きな穴が開いていたからである。フリルは1.5mもあり穴の部分、そこには皮膚が貼っており、骨格を見てみるとまるで窓のような構造であり、正直防具などにはとても使えない代物であり、強固さなど皆無であった。
穴は軽量化を図ったものとみられ、見た目以上に軽い構造になっていた。角もかなり短い恐竜であり、直接的な戦闘力自体も低かったと思われる。
この襟の穴部分、つまり皮膚が貼っていたところには、派手なカラーリングか巨大な目玉模様があり外敵たる肉食竜を威嚇するための意味合いがあったと考えられている。実際図鑑や漫画でもその派手な模様で敵を驚かせたりするシーンもいくつか描かれている。
しかし皮膚の化石が出ていないので信憑性には今一つ欠ける情報である。だがこういう巨大だが脆い器官というのは大方威嚇のため等の、視覚的ディスプレイの意味合いの方が強く、防具としては最初から意味がないものだとして問題なかったとされる。
生態としては多くの角竜同様、群れを成して生息し生活していたとされる。複数体の化石も発見されているがこれは洪水に流されて集まったものともされている。だが近縁種たちは群れを成していたので、群れでの生活という説は否定しきれない。
成長過程で育った
この襟飾りは最初から大きかったわけではない。というのも明確な証拠が残っている、いや、発掘されたのである。2016年の恐竜博でこのカスモサウルスの幼体の全身骨格が発見、展示されたからである。このカスモサウルスの幼体の化石のことは、他の記事でも以前に取り上げた。
この化石は頭部、胴体、脚、尻尾の先端部までほぼ9割近くの骨がそろった、まさに奇跡的ともいうべき代物だったのだがこの骨格はカスモサウルスの研究に多大な情報をもたらし、同時に貢献を果たしてくれた。
まず頭部には角竜の代名詞たる角はまだ小さなこぶ程度の大きさしかなく、巨大なフリルも未発達で非常に小さいものだった。しかも首の骨。彼ら角竜の首は成長過程でツノの発達、巨大化に伴い重量を増す頭部を水平に支えるために骨が二個ほど癒合して、より頑強な作りに成長するにつれ、変化していくのだが、この幼体にそれらの痕跡は見られなかった。
ライオンのオスのタテガミが成長するにつれ発達していくのと、理屈自体は同じである。
この化石の発見により彼らの角とフリル、そこに空いた大穴は成長の過程で徐々に発達していくものだということが証明された。
しかもトリケラトプスを除くと、フリルに穴の開いた角竜は数多く、角竜たちの成長における器官の発達といったものに新たな情報と証拠をもたらす最大の発見となったのである。
恐竜はいまだに1000種類しか発見されていないというが、今回の幼体の化石発見に伴う新たな情報の確認により、研究が飛躍的に進むことは十分予想できる。
ひょっとしたら南極で氷漬けの恐竜の死体すらも出てくる可能性があるかもしれない。