シーラカンスは古代魚の代表
この地球の大半は海であり、母なる海から現在の陸上生物もすべて海から陸上に進出した個体である。逆にクジラのように陸に進出し、また海に戻った動物も多い。その長い歴史の中で幾度となく地球は変化し、様々な種が生まれ、繁栄しては絶滅が起きた。だがこの地球で実に4億年もの間、人知れず深い深い海底で生き延び続け、その姿を変えていない古代魚がいた。
4億年前の古代魚シーラカンス
その古代の魚の代表格にして4億年という莫大な歳月をも潜り抜け、種を存続してきた魚の名は「シーラカンス」
現在から約4億年前の古生代デボン紀に出現した、現代の陸上生物達の形質を備え、彼らの祖先にあたるとされた古代魚である。
それ以降長きにわたり恐竜たちの時代、中生代まで繁栄してきたのだが、彼らは恐竜と同じく6500万年前の隕石落下による恐竜時代の終焉と共に恐竜たちと同じく地球から姿を消したはずだったのである。
だが1938年にシーラカンスは絶滅したという、その常識と認識が覆されることになった。なんとアフリカでシーラカンスが生きた姿で再発見されたのである。この前代未聞の発見に学会は驚愕を隠せず、世界をも騒然とさせ日本でも新聞で取り上げられるなど話題をさらっていった。
それまでに発見されたシーラカンスの化石類と生きたシーラカンスはほとんど変わらない姿であり、これまた学術的に見てもあり得ない特徴だった。
その後二匹目が、1952年インド洋コモロ初頭でまたも再発見されたのである。そのあとも三匹目が1997年にインドネシアで発見され、名実ともにシーラカンスは「生きた化石」として世間に認知されることになったのである。
魚から進化した姿
シーラカンスは胸鰭と腹びれにの根元に筋肉が付いており、その構造はのちに現れる原始両生類と共通した構造になっていたのである。つまり起源が同じであったということであり、この魚と陸上生物の進化は切っても切り離せない関係性にある。
陸に進出した最初の生物は魚類だといわれ、原始的な肺を持ち、それをもとに少しずつ陸の空気に適応していったのである。その魚類の中から進化した後に陸に進出する両生類が誕生したのである。この時代の両生類の化石を見ても、魚類のころの名残が見て取れる、彼らが魚から姿を変えたということはほぼ確実であろう。
生き残った理由
ここで最大の疑問が感じられるがなぜシーラカンスは4億年という長いという言葉がちっぽけに感じるほどの時間を生きてこられたのだろうか、実はシーラカンスの仲間は海だけでなく、川にも生息していたのだが、そういった川に生息していた種類はほぼ絶滅してしまったのである。
川と海の違い、それも深海という点で結構理解が追いつく。彼らが生きてこられた理由としては深海が環境の変化を受けにくかったからだとされている。海は浅いところならまだしも深くなりすぎると変化が起こりにくいのである。また彼らは寿命が長く、エネルギー消費も少ないのでそれも存続の大きな理由だったのだろう。
こんなお酒の話がある。ある海域で数百年前に沈んだ沈没船から積み荷のシャンパンが発見されたのだが、なんとそのシャンパンは飲める状態で深海に沈んでいたというのだ。しかも飲んだ人曰く「香水のような華やかな香りがした」という言葉で、うまいシャンパンだったということである。
なぜ数百年以上も経ってなお飲める状態だったのか、それは沈んだ場所が温度が一定に保たれ深海なので光すらも届かなかったからである。つまりシャンパンが劣化する要素がなく、むしろ熟成がすすみうまみが増していったのである。これを受けシャンパンを海中深くに沈め、より熟成しおいしくさせるという試みまで行われるようにまでなったという。
食中毒も引き起こす成分
さてこのシーラカンスなんと再発見される以前は現地では食べられていたこともあるらしいのだが、なんでも水っぽくて、味がしない、歯ブラシを噛んでいるようだとも揶揄され、しかも体内の油はワックスに近く食べようものなら確実に食中毒を起こす、危険な魚なのである。
そのせいで現地の言葉で「ゴンベッサ」(役に立たないもの)などという筋違いな名前まで付けられたが、再発見以降は釣ると高値が付くことから、逆に幸運を呼ぶ魚であると手のひら返しの意味でも呼ばれるようになった、少々振り回された感のある古代魚である。
生きた古代魚シーラカンス。彼らは深い海に守られ続け、これからも生きていくのかもしれない。