奇妙すぎる?王道と変化が混在した、コンカヴェナトル
恐竜は古い歴史を持ち、昔から人間たちに知られてきたが、この記事でも取り上げてきた特異な姿をした恐竜というのは、共通して2000年代に入ってから発見された種が多いのである。
それまでは種の違いこそあれど似通った姿のものが多く、復元図がどれも似通って体色も同じようなものばかりで判別が付かなかったというものもあるだろうが。
実際近年の復元図はカラーバリエーションも増え、特徴を明確に区別して描くので判別は付きやすい。そのようにわかりやすく変化してきた現代恐竜事情の中で、頭一つ抜けて、変わった恐竜が今回の主役である。
腰にこぶがあった変な肉食竜
今回の主役の恐竜は「コンカヴェナトル」、または「コンカべナトル」。名前の意味は「コブのある狩人」。
体長6m程の中型肉食恐竜で、1憶3000万年前の白亜紀前期のヨーロッパのスペインに生息していたとされる。全身骨格が発見されており、後述のその最大の特徴もはっきり残っていた。
部分的ながらも皮膚が残っていた部分もあり、その保存状態は極めて良好なものであった。過去記事で幾度か取り上げた、ティラノサウルス以上の巨体を誇る種が多く所属する、カルカロドントサウルス類の一種でもある。
その中では初期に登場した恐竜であり、それゆえか小柄であった。彼らの後に大型竜が登場するが彼らは体格こそ小さいが、他に類を見ない特徴を持っていたのである。
彼らの最大の特徴、それは腰部の部分にあった「コブ」である。彼らの胴椎の腰部分の骨2個が盛り上がっており、そこがこぶのような隆起した構造になっていたのである。
その部分以外の骨はすべて同じ長さで、そこだけ明らかに高くなっていたのである。コブの高さは40㎝もあり、もはや突起ともいえる代物だった。
こんな特徴はほかの肉食竜には皆無であり、この恐竜で初めて確認されたのである。
用途はまるで分らない
その用途は依然として不明のままである。推測では彼らの生息地域は赤道直下の非常に温暖な気候で、体温調節のためにこぶを用いていた、もしくは現在のラクダの様にコブに栄養を蓄える貯蔵機関の役割を担っていたともされる。
またいつも通り異性へのアピールのためのディスプレイだったとも思われる。あまりにも特異な特徴だが、どんな動物の特徴にも意味があるはずなので予測は困難である。
ちなみにそのコブのすぐ後ろの骨は尻尾の骨まで極端に低くなり、それゆえ重心である腰と後ろ足の部分はかなり頑強になっていたともされている。
鳥から遠いのに羽毛の痕跡
もう一つの大きな特徴は彼らの前脚の骨に羽毛が生えていた基部の痕跡が見られたのである。骨に約1mm程の一列の「乳頭突起」と言われる独特な突起があり、これは羽毛を持っていた恐竜に共通する特徴で、鳥類の一部でも見られる。
これは近年羽毛恐竜の代表的肉食竜として知られるヴェロキラプトルもこの特徴を持っており、彼らが羽毛を持っていたと決定づけられた特徴なのである。
羽毛を持った恐竜はどれも鳥類に近い種の恐竜だったが、コンカヴェナトルは鳥類からは遠く、原始的な種であり、だがこの恐竜が羽毛を持っていたということはそれだけ羽毛が多様で、様々な恐竜が持っており、単に飛行目的のためだけに持ったのではないという、一種の証明になるとも考えられる。
しかし羽毛とはいえ、原始的でユウティラヌスの様な羽毛だったとされている。復元図では前足に小さなカザキリ羽が付いた姿で描かれることも多い。
奇妙さと王道さ
生態としては当時の生息域の生態系の頂点に君臨しており、当時は亜熱帯で湿潤な気候であり、必然的に獲物になる恐竜も多かったとされる。
歯は薄く鋭いナイフ状であり、殺傷力も高かった。腕もカルカロドントサウルス類由来の大きく頑強なもので、復元骨格では第1指に大きな鉤爪も付いていた、明らかな武器であった。
復元図でもその威容は特異であり、腰の大きな突起と羽毛と鋭い爪の付いた腕、王道的な肉食竜の頭骨からなる顔といった、オーソドックスさの中に奇妙さが加えられた、なんとも奇妙なものである。
近年変わった恐竜が多く見つかっていく中で、こう思うようになった。恐竜の世界の常識は事あるごとに変化し、最新情報もすぐに化石になりかねないという点である。