コリトサウルス、大きなトサカはまるでヘルメット
記事を書いていくと、特徴的な恐竜というのはどうしても肉食恐竜に寄って行ってしまう。というのも肉食竜の方が見た目も映える種類が多く、情報も多く出回り研究が進んでいるからだと考えられる。
もちろん草食竜にも特徴的な種類は数多くいる。だがやはり見栄えというと肉食竜に目が行くのだろう。
今回はそんな草食竜の中で、地味と言えば地味だがユーモラスな見た目をしている草食竜を書く。歴史は古いが知られているのか知られていないのか正直判断が付きづらい恐竜である。
大きなトサカ
今回の主役の草食竜は「コリトサウルス」。名前の意味は「コリント式ヘルメットのトカゲ」。白亜紀後期の草食竜の中では割と有名な種類の恐竜であり、発見された時代も1914年と100年以上も昔になる。
生息していた年代と地域は約8000~7000万年前の北米大陸であった。それ以外ではヨーロッパでの出土例もある。全長8~13m、体重3~5t程とイグアノドンも含まれる、鳥脚類の恐竜の中ではかなり大柄な種類であった。近縁種にはランべオサウルスやパラサウロロフス等がいる。
化石は良好な種類が多い
化石はアメリカのアルバータ州やモンタナ州でよく発見されており、今までに20体もの大量の化石が発見されている。初めて発見された化石も腕と尾の一部が欠損しただけの保存状態が良好なものであり、それ以外にも発見された化石には皮膚の一部がまるでミイラの様に化石化して残り、うろこが付いたままの皮膚がこびりついた状態のものまでがあった。
だが鳥脚類の恐竜、しかもイグアノドンの仲間の恐竜というのはどれも一概に似通った姿をしたものが多く、素人が見ても見分けがつきづらい種類ばかりである。だがこのコリトサウルスが所属するランべオサウルス亜科の恐竜たちは、その頭部に特徴があるものが多く、それが個々の種類を見分ける最大の特徴になっている。
増幅器の役割があったトサカ
このコリトサウルスの最大の特徴は、頭部の大きな半円状、アーチ状に膨らんだトサカである。これが彼らの名前の最大の由来である。このトサカの形が古代ギリシャの一部族、コリント人が使っていた「コリント式ヘルメット」というものに似ていたのが理由である。
このトサカは中身が空洞上で、鼻腔がかなり複雑に入り組んだ構造をしていた。鳴き声を増幅したり空気を多く取り込んで嗅覚を最大限活用できるようにしたなどのさまざまな説がある。謂わば管楽器の役割があったようなのである。
1994年にこの構造を解析し、鳴き声を確かめる実験を行った際にはトロンボーンにも、霧笛にも似た重低音の轟く様な鳴き声が発せられたなどの実験結果が出た。
この構造により独特な鳴き声を発し、仲間内でのコミュニケーション能力や外敵を発見した際の警告音を発するといった機能があったとされる。
水場近くに生息しているとの説があり、外敵が来ると仲間に警告音を発し、水中に逃げ込んだという学説もある。これを踏まえ、アニメや映画でも水場に登場するシーンが比較的多い。だが真実のほどは定かではない。
ちなみにオスのほうが若干トサカが大きかったようである。子供の化石も発見されているがほとんどトサカが発達しておらず、成長過程でトサカが発達していったことは確実なようである。
他にも結構な特徴が
普段は前足を地面につけた四足歩行で歩いていたらしいが、外敵から逃げる際には後ろ脚だけで二足歩行で走ったとされる。前足の指が肉厚で「蹄」にも似ていたのでこの説には信憑性がある。
歯は細かく小さい歯が集合してできており、その本数は600本以上に及んだらしい。これでシダやソテツ類などの硬く繊維質の植物すらも効率よく磨り潰して食べることができたようである。化石からも腹部から葉や、種子、枝が発見されたものもある。
尻尾は腱で固められており、バランサーの役割こそあっただろうが、可動性は乏しかった。
漫画では肉食竜に襲われるシーンがよく描かれるが、ある日本の恐竜特撮では、なんとパキケファロサウルスの様に頭蓋骨が厚く、頭突きで敵を倒すなどというあり得ない設定で撮影が行われていた。
しかもこの番組中にトリケラトプスと戦うシーンがあるのだが、頭突きで牽制し噛みついて攻撃するなど、もはや肉食竜の様であり誇張表現が凄まじかった。まあ70年代ごろの作品の話なので許されたのだろうが。題名が思い出せないのがつらい話である。
地味なようであるが実は多くの特徴を持っていたコリトサウルスの所属する鳥脚類。日本でも新種が発見されたので、その恐竜の記事を後日書いていきたいと思う。