ホラアナハイエナ、誤解された捕食者の歴史
氷河期というのは現在からたった1万年前に終わったばかり。そこから急激に地球は暖かくなり、現在の動物たちの直接の祖先にあたる種もすでに数多く出現していた。そのなかでこの記事を書くに至った、ある悪印象で有名な動物を取り上げたい。
その動物とは「ハイエナ」である。
氷河期のころには現在よりも大型であり、洞窟を住みかとしていた「ホラアナハイエナ」という種がいた。現在から約2万年前に絶滅した大型ハイエナであった。体長は170センチにも達したとされ、現代のハイエナよりも1.5倍ほどの大きさがある。
現在のヨーロッパ付近に生息していたとされ、住みかとされる洞窟でおびただしい量の化石が発掘され、しかもその化石はホラアナグマと変わるように折り重なるように発見されてもおり、熾烈な住みかをめぐっての争いも起こっていた明確な証拠になっている。
獲物とされた生物のものとされる骨の欠片も大量に見つかり、しかも1994年にはフランスのとある洞窟でハイエナと思割れる動物が描かれた壁画が発見されたのである。当時の人類にとっても脅威になっていたということだろう。
ハイエナというのは人間から見ると悪印象が強い生物であり、特にライオンなどの他の動物が捕った獲物を横取りしてしまったり、死肉を食べること。見た目があまり精鍛ではないのが大きな理由だと考えられる。
一般的にブチハイエナがハイエナと真っ先に思い浮かべられる
しかしハイエナは確かにスカベンジャー(主に死肉を食べる動物を指す)としての一面を持つが、狩りの成功率は実はライオンよりも高いのである。ライオンの狩りの成功率は複数で獲物にかかっても30%以下にも関わらず、ハイエナは60%近くと、ほぼ倍の差が存在する。
メスを中心とした社会的なグループを形成する動物であり、体格では確かにライオンに劣るものの、その顎の力はなんと300kg以上にも及び、頑強な歯と合わさって骨をもかみ砕くことができ、巣の周りには獲物の骨を非常食として蓄えておき、死肉を食べてもそれを消化しきる胃袋、鳴き声でコミュニケーションをとっているといわれるなど捕食者としての能力はかなり高い。
アフリカのある地域ではハイエナのとった獲物を逆にライオンが横取りしてしまうということのほうが多いという、逆転現象まで起きているほどであり、この事例から世間のイメージとは逆でハイエナのほうが狩りの成功率が高いことを表してしまっている。
ライオンも横取り自体は食糧確保の常套手段にしている
しかし横取りという行為は確かにいいイメージがないのだが、実は理にかなっている行為なのである。というのも捕食という行為は獲物から反撃されるケースもあり、どうしてもリスクを伴うものであり、結果的に失敗してけがを負わせられることも少なくない上、致命傷をもらうことすらあり、最悪死んでしまう危険すらある。
その点、横取りをすればリスクはほぼないので、意味捕食者同士の横取りはよくあることなのである。
話をもとに戻すとハイエナたちもすでに氷河期には存在していた。現在では比べ物にならないほどの骨を見ただけで委縮するほどの巨大な怪物たちが。
その怪物ハイエナこそ「ペルクロクタ属」というなんとライオン級の巨体を持った種だったのである。
この記事を書く切っ掛けとなったホラアナハイエナ
中新世という古い時代に絶滅した種なのだが、その頭骨の異様さは目を見張るものがある。強靭な顎を持つ生物はそれに比例して頭骨も厚みがあり、頑強になる。
ティラノがいい例であるが、その中で「ディノクロクタ」という種の頭骨はまるで一個の岩塊に思えるほどの巨大さと密度がレプリカでも感じ取れたほどだったのである。大きさは普通のハイエナの1.5倍もあり親子ほどの差があり鼻先は短く犬歯の幅は広く、牙は巨大で太いうえ鋭く、裂肉歯(肉をハサミで切るように肉を切ることと、骨を粉砕することもできる肉食獣特有の奥歯)は異様に大きく、恐るべき顎の力を頭骨だけで見てもわかるほどのものだった。
現在のハイエナでも相当な顎の力なのだから、ディノクロクタの咬筋力はもしかしたら500kgに達したのかもしれない。大きな裂肉歯をみても骨をかみ砕いて食べていたことも明白であり、他の捕食者もむやみに手が出せない存在だったと考えられる。
ハイエナ、彼らはかなり悪い印象の付きまとう生物だが、捕食者としては下手なライオン以上に恐ろしい肉食動物なのである。だがブチハイエナは別名笑いハイエナの異名を取る通り、否定しきれないほど印象が悪いのでこのイメージを払拭するのはもう無理なのかもしれない。印象が大切というのはよく言った話である。