太陽に愛された帆を持つ獰猛な王者、ディメトロドン
前に恐竜誕生以前の地球、古生代ペルム紀の記事を書いた。その時代は後に哺乳類へと進化する祖先たる生物、単弓類が最盛期を誇り大繁栄を成し遂げた時代であった。
どこぞの10年ぶりに復活した怪獣映画では、放射性物質を食べる怪獣としか言えない生物たちが群雄割拠していたというとんでもない設定になっているが、実際はもっと穏やかな時代であった。
ペルム紀の王者
最もこの時代の終わりに起こった天災は到底穏やか等と口が裂けても言えないが。そんな時代に王者に君臨していた生物を今回は主役とする。
その生物の名は「ディメトロドン」、名前の意味は「2種の歯を持つもの」、古生代ペルム紀の獰猛な王者である。体長3.4メートル、頭骨は45センチほどで口に鋭い歯が並んでいた。細い体幹と尻尾、四肢も長く活発な捕食者だったとされ、その時代の最強の肉食単弓類であり、恐竜とは全くの別種ながら、創作では恐竜と同一で扱われることも珍しくない。
彼らの最大の特徴は後に登場する恐竜スピノサウルスの特徴でもある背骨から伸びた骨に支えられた皮膚からできた大きな帆である。
だがディメトロドンとスピノに共通するのは帆だけで両者は全くの別種である。年代にも数億年もの差がある。皮膚から伸びた被膜が付いたこの帆には大量の毛細血管が巡り、大量の血液を巡らせ当時の気候でも効率よく体温調節ができた。
彼らは哺乳類の祖先にあたるとはいえ、爬虫類のように変温動物であるため、自分からエネルギーを消費して体温を作ることができなかった。
ペルム紀の気候
当時のペルム紀初期の気候は寒冷であり、ゴンドワナ大陸が南極近くにあり、大規模な氷床が発達していたせいである。ディメトロドンもこの時期に出現した初期の原始単弓類なので体温調節のために巨大な帆を持つようになった。
寒冷な時代では体温は重要な問題だったのである。この帆のおかげで彼らは優位に立つことができた。朝方になるとまず太陽へ帆を向け、日光で体温を上昇させた。体重が約250kgの彼らの場合、もしも帆がなくて体温を調節しようとしたら、約3時間半もかかり、帆があった場合の必要な時間は約1時間半ほどで済んだとされ、体温を効率よく上げ動けるようになると獲物を探しに出かけたとされる。
獲物はもっぱら草食獣の幼体を狙っており、群れに突っ込んではぐれたところを強力な牙と顎で噛み殺していたとされる。体温を下げて体を冷やす際には帆を風に当てたとされる。それ以外にはディスプレイとしての機能もあったとされる。
恐竜ではない
前述の通り彼らは恐竜とよく混同され、素人が見ても正直恐竜と間違えてしまうのも無理はないだろうと思うほど爬虫類としか言えない姿をしている。
それほど哺乳類の要素が少ないように思える。だが彼らの名前の由来たるその鋭い牙と歯が哺乳類との関係性を示しているのである。獲物に突き刺すための犬歯と肉を切り裂く奥歯の2種を持っており、これを「異歯性」(部位で歯の構造や用途が違うことを指す、多くの哺乳類や一部の爬虫類に見られる)と呼ぶ。これにより獲物を効率よく食えたと考えられる。
ディメトロドンの敵エダフォサウルス
ディメトロドンと生存をかけて争っていたのが同じような姿をした草食性の単弓類、「エダフォサウルス」であった。背には同じく大きな帆があり、見た目は似ていたが四肢は少々短く動きは鈍かったとされる。
帆にはディメトロドンと違い突起の一本一本に太く大きなトゲが付いており、捕食者に対する防具の機能があったとされる。
獰猛かつ凶暴、見た目も目立つ我々哺乳類に近い捕食者ディメトロドン。
太陽からの日の光が彼らを温め続け哺乳類の基盤となり、その後長い間、哺乳類は不遇の時代を送るが再び太陽のもとに返り咲くのである。