ディノサウロイドは恐竜が絶滅せず進化した恐竜人間
恐竜は6600万年前に絶滅したが、もしも隕石が地球に激突せず、恐竜が絶滅を逃れていたら彼らは進化を進め、現代の人類のような生物が生まれたのでは、と解釈された事例があった。
今回は恐竜の進化が終わらず、知的生命体になっていたらという構想に基づいて議論された、生物を書く。
恐竜人間
今回の主人公は「ディノサウロイド」。名前の意味は「恐竜のようなもの」。
ラテン語の単語、sinosaur(恐竜)とoid(のようなもの)を掛け合わせて名付けられた、恐竜から進化した「恐竜人間」を指す言葉である。
その姿から単純に「恐竜人間」と呼ばれることも多い。というか意味合いも姿もほぼ同義である。実際に存在した生物ではなく、もしも「恐竜が絶滅せず、生き延びていたら」という解釈をもとに、知能の高い恐竜が進化した場合、人類のような知的生命体として進化を遂げたのではないかという仮説と、その形態の事。
1982年にカナダの古生物学者「デイル・ラッセル」氏によって提唱された説で、日本の漫画やアニメ、映画などの大衆娯楽でも一時期、一世を風靡し話題によく上がっていた。
ラッセル氏は当時、最も知能が高い恐竜として知られていた「トロオドン」をもとに、彼らが進化をしていた場合、人類のような形態を持った生物が誕生したと提唱した。
提唱と批判
複数の根拠に基づき、ディノサウロイドは以下の可能性を持つと提唱されている。トロオドンは恐竜の中でも特に大きな脳と、複雑な動きができる手を持っており、当時、研究がさほど進んでいなかった恐竜の分野では異質な存在だった。
立体視力が可能な目も持ち、これらの高い能力が根拠になったという。
人間の様に直立姿勢で、大きな目と頭を持った爬虫類要素の強い顔には「頬」がない、尻尾は退化している。
背丈は170㎝で全身にウロコを持ち緑色の体色を持った、まるで宇宙人のような姿かたちで復元されていることが多い。
他に細かい部分では、爬虫類なのでメスには乳房がなく子供には胃袋から半消化されたエサを出して与えるとされる。
手は人とは違い3本指だが、親指にあたる指が残り日本の指と向き合っており、物を掴めるようになっている。男性の生殖器はワニの様に体内に存在し、女性は爬虫類ながら胎生に移行しておりヘソを持つ。
言語も獲得しており、ある種の鳥類の鳴き声に似た言語で話すという。仮説をもとにつくられた模型も有名である。
ディノサウロイドは学会から多くの批判を寄せられ、「人間に似すぎている」と指摘を受けた。例えトロオドンがそれ以上の高い知能を持とうとも、普通の恐竜の形態を持ち続け、くちばしや両足を使う様に進化を遂げたのではと主張している。
一応、環境や状況次第によってはこのように進化したかもしれない「可能性」だけは否定されてはいない。
創作界隈でブームに
この説は多くのSF作家の注目を浴びることになり、発表以降は日本の漫画や特撮でも登場してきた。
細かく語れば、発祥は日本のSF漫画化「豊田有恒」氏が自身の作品「ダイノサウルス作戦」において似通った知的恐竜を描いたのが始まりとされる。
ラッセル氏がこのことに関連しているのかは一切不明だが、その時々の意図しない「ながれ」でそのようなことが起きたのかもしれない。
豊田氏が前述の作品を描いたのは1982年の事だった。日本でも80年代までの恐竜を扱った創作ではよく登場していたが、90年代に入ると登場の機会は減り、逆に「羽毛恐竜」、派手で目立つ「恐竜の多様さ」に世間の目が向くようになった。
登場の機会はあったが、世間でいうマイナーな作品群ばかりで、一部を除いて目立つ機会はことさら少なくなっていった。
有名な作品では「ドラえもん・のび太と竜の騎士」がある。
地底で進化を遂げた恐竜がほぼ人類と変わらない文明を築き上げているという設定が盛り込まれている。
消滅したというより、媒体により設定を変え恐竜創作の「片隅」に存在しているといっていい。恐竜の絶滅や存続は彼らの生き方以上に、興味深い話題であり、このディノサウロイドも空想されたものとはいえ、それに似た生物がいてもおかしくはなかったというのも不思議な話である。