フォストリア。宝石化したオーストラリアの恐竜
恐竜の新たな化石がオーストラリアで発見されたというニュースが入った。
その化石は驚愕すべき「美しさ」だった。
宝石化した恐竜
その化石はなんと、宝石の「オパール化」していた、恐竜界でも非常に珍しい化石だったのだ。
しかも化石の恐竜は、これまた新種恐竜で、名前は「フォストリア」と名付けられた。正式名称は「フォストリア・ディムバングル」。
名前の意味は、恐竜を発見したオパールの採掘者、「ボブ・フォスター」氏と、先住民アボリジニのユアラライ族の言葉で「羊を囲う場所」という言葉からとられた。
化石が「シープヤード」という場所から見つかったのも理由である。命名者はフォスター氏の妻で、アボリジニのカミラロイ族のジェニー氏だった。
草食恐竜の新種
約一億年前の、白亜紀中期ごろのオーストラリアに生きていた。
彼らの生息域は当時、屈指の氾濫原で、豊かな水資源に恵まれていた。
緑豊かな土地は、草食恐竜にとって打ってつけの場所だったという。
体長は5mとゾウくらいの大きさで、草食恐竜のイグアノドンに近縁だとされる。後ろ脚だけに2本足で歩いていたとされるが、前足も付いて4足歩行で行動することもあったようだ。
発見された化石から、大人と子供の骨が混じっており、群れを形成していた可能性が高いといい、豊富に存在した古代植物を食べていたという。
この種が属する「カモノハシ竜」は恐竜時代の末期のアメリカ、アジアでよく見られた。
フォストリアは「美しさ」と恐竜時代の「生態系」の理解に向けて重要な手がかりになるという。
宝石化石としては最多数
発見された化石は、100個あまりもあったが60片と、多くが「オパール化」しており、恐竜4頭分の骨があったという。
今までのオパール化した化石は、ほとんどがキバや骨片といった断片的なものだが、今回の化石は最も多くの部位が揃っていたという。実はこの化石は1986年に発見されていた。
その後、博物館に引き取られたが、詳しい調査がされず収蔵品となり、15年もの長い間眠っていた。
化石は複数の化石が集合したもので、最初は一つの骨格かと思われたが、調べていくと大きさがそれぞれ違う肩甲骨の化石だった。
見つかったのは肩甲骨を始め、肋骨、腕や頭、背中、尻尾、臀部、足の骨だった。
全身の20%の骨がそろい、オーストラリアの化石の中で、1、2を争うほど詳しい情報が得られた恐竜だという。
オーストラリアは新種恐竜の化石が、ほとんど見つかることがないといい、オーストラリアで現在まで発見された種類は、たったの24種類だけである。
そのなかでこれだけの希少な化石が見つかるのは、異例中の異例と言える。
「群れ」の恐竜化石も、この種で初めて発見された。
ちなみに中生代の海生爬虫類「プレシオサウルス」でも骨格の一部がオパール化していた全身化石も見つかっている。
水から生まれた宝石
化石は宝石化していただけあり、青みがかったグレーカラーで、角度や光の加減によっては見事な青色に輝き、本物の宝石の如く煌めく。
オパールはケイ酸を多く含んだ地下水が、圧縮されるようにして鉱物化していく、少々特殊な宝石で、水分を他の宝石に比べ、多く含んでいるのが特徴。「水」由来のためか、青みがかったものが多く見つかる。赤や緑、と言ったバリエーションもあるが。
オーストラリアが有名な産地で、化石も採掘場で見つかった。ちなみに、10月の誕生石で、特に日本で好まれている。
乾燥すると色が濁ったりヒビが入ることもあり、原石は十分乾燥させ、絶えたオパールだけ宝飾品に加工される。
古代ギリシャでは、預言と病から守ってくれるとされ、ヨーロッパでは俊傑、希望、真実の象徴とされた。
光を当てると輝く「遊色効果」が強く出る宝石で、作家たちは花火、銀河、火山になぞらえていた。
恐竜化石は、金持ちの間で人気があり、買い取ってしまい研究に支障が出たりして、問題視されている。
今回の化石もセレブやマニアが、かなりの額を張って買いたくなるような、吸い込まれるような美しさがあったのだ。