ゴルゴノプス、熱された世界の双剣使い
前の記事で、恐竜たちがこの地球上に出現し始めた時代、三畳紀について取り上げた。その時代はまだ恐竜は脇役でしかなく、主役になるにはライバルたる生物たちが絶滅するまで待たなければならなかった。
このように恐竜出現以前から地球にははた目から見ると恐竜の様だが実は全く別の生物、だが恐竜にも引けを取らない捕食者も少なからず存在した。結構前の記事でも書いた、恐竜時代以前の地球史上最大級の絶滅によって終わった「ペルム紀」。
恐竜よりも古い、ペルム紀の強力なハンター
この時代の終わりごろにディメトロドンと同じく、同時代の王者格にまで上り詰めた捕食者が今回の記事の主役である。今回の記事の主役の生物の名は「ゴルゴノプス」
名前の意味は「恐ろしい顔」。名前の由来はギリシャ神話に登場する女神の怒りを買った結果、髪の毛がヘビでその目で見たものを石に変えてしまう、怪物「ゴルゴーン」から。
恐竜が出現する以前の時代、約2憶4800万年前の古生代ペルム紀に、現在の南アフリカあたりに生息していた、体長3mの当時としては破格の捕食者であった。発見されたのは現在から130年ほど昔の南アフリカのカルー盆地である。1876年に正式に命名された。
哺乳類の先祖、
彼らは一見すると恐竜と同じような姿をしている。だが恐竜とは全くの別種であり、たんに見た目が似ているだけの別の生き物である。分類としても爬虫類ではなく単弓類という後に誕生する哺乳類の祖先にあたる生物である。
同時代の王者であったディメトロドンも同じく単弓類に属していた。肉体の構造を見てみると哺乳類に近い部分がいくつか見受けられる。単弓類はこのペルム紀に最大の繁栄を迎え、当時の捕食者と被捕食者の多くも単弓類であり、生態系は単弓類が支配者の座に君臨していた。
ゴルゴノプスの種族はこの時代に数多く反映しており、その生息域は現在のシベリアまでと広範囲に生息していた。近縁種も数多く初期の種は犬ほどの大きさの物から大型犬程度のもの、サイ並みの巨体を持つ体長4m級の種も存在した。
ゴルゴノプス類も彼ら以前の捕食者が衰退していき、その生態系の穴を埋める形でハンターとしての立場を確立させた。
巨大な双剣、強力な顎
最大の特徴はその巨大な頭骨とそれに連なる巨大かつ鋭い2本1対のサーベル状の牙である。数千万年後に地球に現れるサーベルタイガーことスミロドンと同じように強力な牙を持っていた。
この牙の長さは12センチと下あごのそのまた下あたりまでに及び、主な獲物であったディキノドン類、ディノケファルス類、カメ類の祖先にあたるパレイアサウルス類を捕食する際に、彼らが皮膚に持っていた強固な装甲版を貫くための最大の武器として用いていた。
その威容は正に一対の剣であり、牙以外にも鋭い切歯を持ち、獲物の肉を容易に引きちぎることができた。巨大な頭部には大きな筋突起(筋肉の付着する部分)があり、そこに巨大かつ強力な筋肉が付着しており、凄まじい咬筋力を生み出していたのは明白であり、顎はなんと90度近くまで大きく開くことができた。
この顎の構造は彼らの牙を最大限活用できる構造でこの強力な顎と鋭い牙で当時の生態系の頂点に君臨していたとされる。脚の付き方はがに股で直立歩行までとはいかないものの、中腰のような姿勢で効率的に動くことができ、このことから活発なハンターだったと推測されている。前述の牙を見ても強い捕食性があったのは明らかである
熱された世界の捕食者
当時の地球の気候は非常に高温であり、地表の多くが半砂漠化していたほど。そのことから暑い日中に行動することは避け、比較的涼しい夜や早朝に活動して狩りを行っていたとされる。腕の骨の付いていた位置が水平に近く、この腕の付き方はワニにも似ており、このことから半水棲生活を送っていたともいわれているが、当時水辺が少なかった地球では半水棲生活では急激な環境の変化に適応しづらかったと思われるので、そこまで確信は得られない考えであろう。
彼らの頭骨には複数の小さなくぼみがあり、これは体毛の生えていた痕跡ではないかとされている。
ディメトロドンと並び映像化の機会に近年は恵まれている。イギリスの制作した「ウォーキングwithモンスター」、SFドラマ「プライミーバル」といった有名どころで起用されている。
そんな彼らもペルム紀末期史上最悪の大絶滅のせいで、その繁栄に終止符を打たれることになるのである。
スミロドンを見るとゴルゴノプスとは巨大な牙を持つという共通点がある。こういった長い時間で埋もれた遺伝子が何らかの要因で再び開花することもあるということだろう。