「ヘレラサウルス」最古の恐竜
最古の恐竜の一種
恐竜たちの始まりの時代である三畳紀。その時代に出現し、最古の恐竜という異名を取ったコエロフィシスとは別の方向性で有名な、初期の恐竜を取り上げる。
今回の記事の主役の恐竜は「ヘレラサウルス」
名前は「ヘレラのトカゲ」、別名は「ヘレルラサウルス」
この恐竜が地元の農夫、もしくは職人といわれるビクトリノ・ヘレラ氏の手により発見されたので、発見者の名前からこの名が付けられた。1958年のアルゼンチンのサンフアン州立公園で下半身の化石のみ見つかり、不十分なものだったが、完全な骨格は1988年になってから発見され、この時になってようやく正式な記述がなされるようになった。
原始的な恐竜にしては攻撃力が高い肉体を持っていた。
最古の恐竜といわれる通り、地球に出現した時期は現在から約2憶3000万年前だとされ、この時期はヘレラサウルスのみならず地球に恐竜が出現し始めた時期と重なる。
肉体の特徴を見ても非常に古い獣脚類の一種だが、原始的すぎて逆に恐竜によく似た別の生物ではないかともいわれている。体長は3m~5m、体重250kg~300kgと、三畳紀の原始的な恐竜の部類としてはかなり大柄な体格をしていた。
体高は約1.2mほど。大柄ながらも足が比較的長い作りになっていた。骨の内部は空洞上でこれにより、骨の強度が下がるものの体重が減らせるため、大柄だといわれながらも軽快な行動ができたと推測されている。
シダなどが生い茂る林を中心に生息していたとされ、持ち前の軽快さでトカゲや昆虫などの小動物、他の恐竜を狩っていたとされる。
古い恐竜なのに新しい部分が多い。
彼らの顎は現在のヘビにも似ており、顎同士の結合が緩く、そのため口を大きく開くことができた。顎の関節は前後に動かすことができる構造で、これは、この時代の恐竜のものとしては進んだ構造をしていた。
頭骨を見ても、頭はコエロフィシスに比べ肉厚で丈夫な造りであり、そこに付いた歯も大きいうえに鋭く、これを合わせると、強力な武器となったことは想像に難くない。
腕も比較的大きく鋭い鉤爪が付いており、これらの特徴を合わせて考えると積極的かつ行動的な捕食者だった可能性が非常に高い。
彼らを原始的という最たる特徴は指の数である、ヘレラサウルスは前足に5本、後ろ足に4本の指がついており、これは最初期の恐竜たちに多く見られる特徴である。だが手の指は5本とはいえ機能する指は3本で、その指に前述のかぎ爪が付いていた。
最初期の恐竜の一つとされるだけあり、体の骨格の所々が古い形態を残している。しかしそれに反して特徴的な部分もかなり多い。
原始的な恐竜でありながらも彼らはなぜか骨盤が発達しており、その形はより先の時代に登場する草食竜が多く所属する、鳥盤類のものと似ていた。
恥骨も後に出現する恐竜たちのものに似ており、後の一部の獣脚類よりも進化した構造で、その構造はジュラ紀以降の恐竜にも似ており、かなり進んだ恐竜の特徴にも近いものがあった。
このことから「進化の袋小路」に陥ってしまった恐竜とも呼称されている。
恐竜なのか、似ているだけの別の生き物か。
2017年には彼らは獣脚類以前の竜盤目から鳥盤目に分かれるよりもずっと古い恐竜で、獣脚類にも含まれておらず、ヘレラサウルスを獣脚類グループから外す説も唱えられていた。他にも骨盤が小さい、首の可動域が直線的であまり動かせなかったりといった特徴もあり、これも彼らがそもそも恐竜に含めていいのかという疑問点でもある。
そしてこれだけは言えることだが、彼らのような完全二足歩行の生物は三畳紀の当時では活発的な捕食者の最たるものであり、前述の強力な爪などの武器を用い、比較的大きな獲物を捕食していた。
前述の通り、恐竜のように見えるがそうではない生物も多く、ヘレラサウルスもその疑念は付きまとう。だが時間がたっていけば新たな種の恐竜が見つかり、謎は解明に至るだろう。