7000万年の時を経たむかわ竜
今回は2003年に発見された、日本史上初の巨大竜の化石と、その恐竜について取り上げる。昔は日本には恐竜類は生息しておらず、すべて外国の恐竜が恐竜界を占めていた。
だが近年では恐竜類は日本にも生息していたことが判明し、それ以外にも数多くの恐竜が生息していたことが判明している。福井県が恐竜が最大の観光資源となっているが、これを見るだけで日本の恐竜の豊かさがうかがい知れる。
日本恐竜研究の歴史の飛躍
今回取り上げる恐竜の名は「カムイサウルス・ジャポニクス」。通称むかわ竜である。名前の意味は北海道のむかわ町で発見されたことによる。生息していた年代は恐竜絶滅間近の、7000万年前の白亜紀後期であった。
体長8m、体高3mに達する大型の草食恐竜であり、後述の化石の発見を含め、日本初の発見例となった大型草食恐竜の一種である。
この恐竜の発見は世界の恐竜研究に衝撃を与え、日本の恐竜研究のレベルを一段階引き上げることに成功したといわしめるほどの発見とされた。
全身がそのまま見つかった
この恐竜の最大の発見それは、全身が丸ごと発見されたという日本ではありえない事例だったからである。
通常恐竜の化石というのはバラバラの分離状態で発見されることがほとんどである。草食竜は四ねばすぐに肉食竜によって食べられてしまい、食事中に骨もバラバラになる。
たとえ食われず素早く死体を土が包んだとしても、地層の隆起などにより、地表近くに化石が出てこなければ発見はほぼ不可能なのである。
しかも温暖な日本では雨風の浸食の影響を受けやすく、結果地層が削られ、全身が運よく化石になっても分離される懸念があり、そのせいで日本で出てくる恐竜類の化石はどれもが断片的なものばかりで、むしろ全身骨格の発見など夢物語といっていいのである。
だがこのムカワリュウはなんと全身の90%以上が発見された、他記事でも取り上げた「ボレアロペルタ」並みの奇跡的発見事例だったのである。
断片的でパズルのピースのその欠片ぐらいしか発見されない日本恐竜の化石では正に史上初にして奇跡の発見例でしかなかった。
化石はつい最近になり完成
最初の化石自体は尻尾が2003年に発見された。その後2013年に太ももの骨が見つかり他の部位が次々に発見され、最も情報を含む重要な頭部も見つかり、これによりめでたくムカワリュウは現在の地球に姿を再び現したのである。
この頭部は2014年にクリーニングが終わり、その後2017年に全身骨格の復元並べ替え作業が行われ、見事な姿を見せ日本史上初となる恐竜の全身骨格となったのである。
その化石も細部は欠けており、完璧とまではいかなかったが、生前の姿の復元、身体能力、生活様式がどのようなものだったのかが一気にわかる程の情報をもたらしてくれた。
学者からすれば姿がそのまま出てきたと断言できるものであり、かなり精巧な復元もできる。
化石化した軌跡
ハドロサウルス科の一種の恐竜とされ、生前は群れを作り外敵から身を守っていたとされる。歯の化石も見つかっているがこの歯は表面が平らで、その数は数百本にも及ぶほど多かった。
当時の硬い繊維質の栄養価も心もとない植物を徹底的に磨り潰し、最大限の栄養を確保できるように発達させていたとされる。
かなり大柄であり、平均的体格の男性でも脚の付け根にも届かないほどの、足の長さがあり、外敵からは走って逃げられたことは容易に想像できる。
発見された化石の個体は、生前津波によって沖合10㎞まで流されたのだとされる。水死したムカワリュウは体内で発生したガスによって沖合10㎞まで浮かんで流され、そこでガスが抜けて、海底まで沈んだとされる。そこで泥に埋もれ姿が保たれたままに化石と化したのである。
その後で地殻変動による台地の隆起が起こり、北海道はむかわ町の地層で奇跡の発見を迎えることになるのである。ここまで最低でも約6000万年の時間がたっていた。
歴史に名を刻みつけたムカワリュウ。日本は世界に負けない恐竜研究の地だということを世界に知らしめた奇跡の巨大竜であった。