モロス・イントレピドゥス、新種ティラノサウルス類
またも北米で、新種恐竜の報告が上がった。それはティラノサウルス類の新種で、地層の年代を見ると、ティラノサウルスの進化と密接に関わるであろう、恐竜の可能性が高いという。また一つ、恐竜の王者の謎が解き明かされそうだ。今回は、その新種ティラノ類の記事を書いていく。
新しい、最古のティラノ類
そのティラノ類の新種の名は、「モロス・イントレピドゥス」。名前の意味は「世界を駆け巡る、破滅の前兆」。
非常に仰々しい名前が付けられたが、ティラノサウルス族の最後の事を考えれば、妥当な気もする。体高は1~1.2m、体重77㎏と非常に小柄な恐竜で、化石は発見されたティラノ類の中で、最古のもので、最も小型となる。
彼らの年代から、突然巨大化
ティラノサウルスは最強の恐竜として、最も有名だが、実はその進化の歴史は謎に包まれている。
彼らの祖先が出現した時期と、巨大化までの時期を結ぶ年代の地層から、今まで化石が見つかっていないのだ。
年代でいえば、白亜紀の中期ごろ、ちょうどティラノサウルスが大型化し始めたとされる期間で、年代でいえば、9600万年前あたりになるという。
この時代からは、10年に渡り調査が進められても、ティラノサウルスの痕跡を見つけることができなかった。
そのためティラノの詳細な進化は不明で、所謂「ミッシング・リンク」である。
8000万年前の、アロサウルス類の衰退に伴い、ティラノ類が急激に巨大化したとされる。
失われた時代の情報を持つ
10年もの調査で、唯一見つかったこの恐竜は、多くの情報を齎した。
化石の骨の断面を詳細に調べると、死んだのは成体一歩手前の年齢で、最初から小柄な種類だった事が判明した。
後ろ脚には、後の大型ティラノ類にみられる、走ることに適した特徴が見られたとのこと。
モロスは軽量な肉体で、疾走し、小型生物を捕食していたとされる。逆に、俊敏さを武器に、大型捕食者からも逃走を図ったとされる
モロスの時代まで、ティラノサウルスが小型だったとすれば、純粋なティラノサウルスが登場するまでに掛かった時間は、わずか1600万年だけだったとされる。
この時間は進化に欠ける年月としても、短く、ティラノサウルスの進化がどれほど驚異的だったかが分かる。その体格の巨大化の比率は、約10倍にも達した。
しかもモロスの姿は、アジアで発見された原始的なティラノ類に酷似していた。
このことから、モロスの祖先は大陸が地続きだったころに、後にアメリカとなる大地に、渡ってきたとされる。
他の恐竜の化石を見ても、2大陸間で交流があったことは確実ともされる。
その生息環境の解明にも、重要な役割があり、モロスが見つかった地層からは、ティラノサウルスのライバルであり、進化を阻んでいたとされる天敵、アロサウルス科の怪物恐竜、「シアッツ」の化石も見つかっている。
この様に、モロスは「ミッシング・リンク」を埋めうる、重要な情報を持って、現代に現れた。
どうやら近いうちに、ティラノサウルスの全容がはっきりしそうである。