三畳紀、首長竜の先祖ノトサウルス
恐竜ではないが、その界隈では案外名が知れている、かなり古い海の爬虫類
首長竜の元祖
その海竜の名は「ノトサウルス」。名前の意味は「見せ掛けの爬虫類」、和名は「偽竜」。
全長1~4m、体重90㎏。
役2億2800万年~1憶9960万年前の中生代三畳紀の海洋に生息していた、初期の海棲爬虫類の一種である。
当時のヨーロッパ、アフリカ、アジア付近など、地球の海洋の広範囲に幅広く生息していた生物の様である。
三畳紀に全盛期を誇った海棲爬虫類で、後の恐竜の繁栄した時代の海洋に生息していた海棲爬虫類の祖先にあたる生物と考えられている。
1834年と日本がまだ江戸時代の頃の、ドイツで発見されたかなり古い部類の海棲爬虫類である。
陸上から海中へ進化の途中
彼らの姿と骨を見てみると、首は比較的長く、口先も細長い形状になっていた。四肢はきちんと指が存在し、後の首長竜などのようなオール状のヒレの形にはなっておらず、指の間に形成された水かきで、水中を泳いでいたと考えられる。
長い尾も水中でのバランサーや、推進装置の機能があったと思われる。
こうした陸上から海洋への適応、形態の変化は現代のイルカやシャチ、クジラ類にも見られる特徴で、彼らが陸上から海洋へ生活の場を移し始めていた生物だったことが分かる。
実際に肩や腰、腹側の骨の骨格が頑丈に作られており、この肉体故、陸上においても活動は問題なく行えたと推測される。
このことから完全に水中で生活していたわけではなく、沿岸部に住み現在のアザラシやアシカのような半水棲、半陸上型の生活スタイルを送っていたと考えられている。
海と陸地の両方でうまく生活
口の形状と歯、肉体の形態を見ると彼らは魚食性で、海洋の古代の魚類を餌にしていたとされる。
ノトサウルスの歯の形状は細長く、円錐型で杭にも似た形になっていた。
歯は側面に溝があり、この溝は魚をくわえこんだ際の滑り止めの機能があった。
歯同士が交差する形で生えており、獲物を逃がさないようになっていた。
またこの歯は獲物に刺さりやすい形でもあり、この歯に似た歯の持ち主に、スピノサウルスがおり、こちらも主食は魚類だったらしく、魚がノトサウルスの主食だったのは確実なようである。
この歯の形状は後のアメリカの首長竜のエラスモサウルスに、そのままの形状で引き継がれており、ノトサウルス類の一部から、後の首長竜の出現に繋がったという、有力な証拠になっている。
しかし、より厳密に考えると、ノトサウルスの祖先のグループから首長竜が出現したらしく、直接の祖先とは言えないらしい。
どのように繁殖したかは詳しく判明していないが、手足は陸に上がれる構造と機能があり、海中で出産する、卵胎生ではなく、陸地に上がり卵を産んでいた可能性が高いという。
極めて初期の海棲爬虫類である点を見ても、この説の可能性は高いと思われる。
火山と魚竜に敗れ絶滅
ノトサウルスは三畳紀に最盛期を誇ったが、同時期に出現し始めた「魚竜」によって生態系の立場を奪われ、絶滅に追いやられたとされる。
また三畳紀末期には、大規模な火山噴火に伴う、溶岩の噴出により大気中の二酸化炭素量が2倍になり、地球全体規模で気温と海水温の上昇に繋がったという。
急激な減少故に多くの生物が対応できずに、絶滅に追い込まれたという。
噴火は4回ほど起こったというが、この繰り返しにより環境の変化が起こり、恐竜の進化を阻んでいた生物群が絶滅に追い込まれ、逆に恐竜類に繁栄期をもたらす大きなきっかけとなったという。
ノトサウルスは生物の進化と絶滅、形態変化、環境の変化事情を如実に語ってくれる、古い爬虫類であった。