三本の鎌を持つ大ヅメ恐竜テリジノサウルス
近年の恐竜物のアニメやゲーム、映画などでは人知れず脚光を浴びつつある、非常に奇妙な恐竜がいる。恐竜の名は「テリジノサウルス」、名前の意味は「巨大な鎌を持つトカゲ」という意味である。
モンゴルで見つかった化石
最初に見つかったのは1948年、現在のモンゴルで2メートルにも達する上腕骨と、3本の鋭く硬い末節骨(先端部の骨)が入ったそれを包み込むケラチン層の鞘(ケラチンは人間の爪の主成分でもある)、で形成された巨大なかぎ爪と不完全な後ろ足、あばら骨の一部が発見された。
この恐竜は全体骨格がほぼ見つかっていなく、長らく謎の恐竜だったのだが、彼自身を有名たらしめる部位であるかぎ爪の化石が真っ先に発見されたため、最近ではその特徴的な姿から話題になりつつあるのである。
実は草食系だった
最初に見つかった化石の部位は腕と巨大な鉤爪だったのである。そのあまりの大きさに発見した学者たちは当初巨大な亀のあばら骨ではないかと疑ったほどのものだったのだ。
しかしその後の調査でそれが巨大な爪であるとわかり、そのほかの部位の化石が見つからず情報不足だったこともあり当初は恐るべき肉食恐竜だったといわれた。実際昔の再現図では肉食恐竜として描かれており、「ディノクライシス」というゲームでも肉食恐竜として登場した。
だがのちの調査により1988年に近縁種である「アラシャサウルス」の存在が明らかになり、この恐竜をもとにした復元の結果、現在では草食性という結果に落ち着いた。
アラシャサウルスは頭骨だけが欠如した、ほぼ全身の骨格化石が発見され、同じテリジノサウルス類の研究の躍進に多大な影響を及ぼした。
この恐竜により再現されたその姿は樽のような胴体に短い足、長い両手に巨大な鉤爪、長い首に小さな頭といった、はっきりいって珍妙な姿でありしかもさいきんでは羽毛も生えていたのではとされ再現図でも羽毛をはやした姿になっていることが多くなった。
獣脚類の進化
彼らは草食性の恐竜でありながら、ほとんどの肉食恐竜が所属し、鳥類が生まれたともされる獣脚類に属する恐竜なのである。だが獣脚類のどの種類がどういった進化の過程でこのような奇妙な姿へと進化を遂げたのかはいまだにわかっていない。
彼らは腕を側面に広げることができる構造しており、この構造から察するに、長い爪は実際に武器としても使われていたとされ、これで敵と激戦を繰り広げたとされる。それ以外の用途としては、今書いた通り武器としても使った、樹木の葉を寄せ集め食べるため、もしくはアリクイのようにアリ塚を壊して食べるためという説もある。
最近の研究では魚食性?
だが近年では魚食性だったという説も浮上してきている。実際アリクイの爪もその気になれば人間すら死に至らしめるほどの武器としても機能し、その強度はコンクリート以上の強度に達するともいわれるアリ塚すら力任せに壊せるほどのものであり、食性の意見としてはこの学説は無視できない。
日本でも彼らの近縁種の化石が発見されてはいるものの、やはり本種の完全な化石自体が発見されていないため、いまだに多くの謎に包まれている恐竜である。
だがその巨大なかぎ爪という男のロマンをくすぐられるような恐竜として今までやってこられた、これまた奇妙な経緯をたどった恐竜ともいえる。