恵まれしアラスカの頂点、コディアックヒグマ
パンダが可愛いと思える人は多いはずである。
だが彼らはその体色故に好意的に見られているが、実際はクマの一種であり、野生では危険生物にも指定される程の攻撃性も秘めているのである。
実際体色を真っ黒にしてみれば普通のクマと全然変わらず、体色だけに目が行っていると指摘すると夢がない人と思われるだろうが、事実なのである。
パンダはクマ科動物の中で最小級の動物だが、最小級がいるなら最大級の生物がいる。今回はそんな熊の中でホッキョクグマに匹敵する巨体の怪物クマを取り上げる。
ホッキョクグマに次ぐ巨大クマ
今回の主役のクマは「コディアックヒグマ」。別名を「アラスカヒグマ」。
アラスカの沿岸部、アラスカ半島のコディアック島という島に生息する特殊なヒグマの一種である。
クマは人にとって恐るべき猛獣であるが、日本のクマは本土のツキノワグマと北海道のヒグマの二種類しかいない。だが人間にとっては脅威で最近はクマ被害はニュースでも多く報じられるようになった。だがその熊たちでさえこのコディアックヒグマの前では子供と思えるほどである。
コディアックヒグマの体長はオスが平均2m44㎝、体高1m33㎝、メスはオスよりも20%小柄になる。何よりも体重が凄まじくオスの平均体重が390㎏、とある個体では1tに達した記録すらあるほど。
立ち上がると3mに達する個体もざらであり、ホッキョクグマに匹敵するほどの巨体の持ち主ばかりなのである。
北海道のヒグマが平均体長180㎝程度とすれば、その巨大さが分かる。
豊富な食料で巨大化
なぜこれだけ巨大化するのか
それはコディアック島の食糧事情が要因である。コディアック島は暖流が流れ、一年を通して穏やかな気候に包まれている。
毎年鮭が川を遡ってくるのだが、その種類は5種類にも及び、その遡上時期と産卵シーズンが半年近くと非常に長いのである。つまりその時期に川に行けばいつでも鮭を心行くまで食べられるのである。
鮭は産卵を控え卵も持ち、皮下脂肪も豊富に蓄えているがあまりにも豊富に取れるので、鮭を取ったら栄養分の高い皮と頭だけを食べて、身はそのまま手を付けず捨てるという、野生にしては贅沢極まりない食べ方をするほどである。
半年も産卵が続くということは、鮭の産卵の周期の間が短く、鮭が食べられない期間の方が短いのである。
一説には食料が豊富なので気性が常に穏やかで、島民に危害を加えることはほぼないとまで言われる。だがあまりにも巨体なので、じゃれられただけで殺されかねないので不用意に近づくことは厳禁である。
ハンティングでも返り討ちに
だがそんな懸念が2016年に現実のものとなってしまった。コディアック島で一人の男性がクマに襲われるという獣害事件が起こったのである。
かつてこのヒグマたちは絶滅の危機に瀕していたこともあったがここ10年で、ゆっくりとだが個体数を延ばすことに成功した。だが個体数が増えれば島という閉鎖的な環境ではクマと人間の遭遇の機会が多くなり、必然危険が増してしまう傾向にある。
数が増えたこともあり、人的被害を防ぐためにハンターが狩猟で数を調整することも多くなった。特に毛皮や肉に需要があるとのこと、巨体なのでハンティングでもかなり人気があるらしい。
だが巨体なので見つけやすいといっても彼らのフィールドである、森林や山岳地帯ではいかに猟銃を持ったハンターと言えど、不利なことは変わりない。逆に返り討ちにされてしまう事例も後を絶たないらしい。
アラスカの王
彼らは時速50㎞と車並みの速度で走ることが可能であり、巨体な分だけ当然筋力も増す計算になるだろうから、人など発泡スチロールを壊すようにもて遊ばれてしまうことだろう。
普通のヒグマですらその気になれば車の外装を破壊してしまえるほどの攻撃力を持っているだろうが、コディアックヒグマはその比ではない、犠牲者が出るのもうなづける話である。
アラスカ半島はその大自然から観光スポットとしても人気を集めており、その目でどれほどのものか見たいものである。